AIといえば、ここ数年で日常的に耳にすることが増えた用語の1つでしょう。AIの進化により、将来的にはエンジニアの仕事もAIに置き換わるとまで言われています。
エンジニアを目指している人の中には、「AIに置き換わる仕事を選んで大丈夫なのかな?」と不安に思っている人も多くいるのではないでしょうか。
そんな方に向けて、決してすべての仕事が置き換わるというわけではないということを、AIの特徴を含めながら解説していきます。
AIと機械学習について
はじめに、AIとは「Artificial Intelligence」の略称で、日本語では人工知能と訳されます。人間のように考えて動く知能を持った、コンピュータシステムやソフトウェアのことをいいます。
AIに用いられる主な技術用語の1つに「機械学習」というものがあります。AIと混同されやすい用語ですが、機械学習はコンピュータがデータを分析する手法の一つです。
文字や数値、画像、音声といった大量の学習データから、コンピュータが自ら知識やルール、パターンなどを見つけだす学習技術のことを指します。
AIの進化によって変化する働き方
急速なAI技術の進化により、AIは労働力にもなり、単純な作業はいずれAIに置き換わると考えられます。
作業手順や方法を一度学習すれば、AIはその作業を正確かつスピーディーに長く続けることができます。人間と違い、疲労による精度の低下や勤務時間の規定もありません。
また、定型的な作業だけではなく、作業の内容が変化してもある程度は柔軟に対応することができます。そのため、生産性の向上や業務効率化においてAIの導入には大きな効果が期待されています。
そのような背景から、あらゆる仕事における単純作業はAIに置き換わることは充分にあり得ると言えるでしょう。
AIに奪われる仕事・奪われない仕事
では、具体的にどのような仕事がAIに置き換わると予測されているのかを見ていきましょう。
AIの特徴から、パターン化できる業務はAIに奪われる可能性が高いと言われています。人間の仕事がAIに置き換わっている身近な例としては、ファミレスに行くとロボットが配膳している光景を見たことはないでしょうか?これは、どの経路を辿ってどのテーブルに運ぶというような手順をAIに学習させ実現しているのです。
一方で、AIはゼロから何かを作り出すことはできません。そのため、企画力や創造力といったスキルはこれからも人間にしか発揮できないものでしょう。さらに、柔軟性、コミュニケーション能力、リーダーシップや関係性の構築に関わるようなことは、AIでは実現できない人間の得意分野となります。
エンジニアの仕事がAIに奪われる理由
プログラミングの自動生成が可能
AIが得意とするのはルールやパターンが決まっている作業であり、プログラミングもその1つに含まれるでしょう。今後AI技術が進化していくにつれて、本来は知識と技術が必要なプログラミングもAIが変わりにできるようになる可能性があります。
現在でも、ChatGPTなどのAIサービスに「Javaでプログラミングをしてみてください。」と指示を出すと、ユーザーに名前を尋ね挨拶する簡単なアプリケーションの例を一瞬で書き上げてしまいます。そのため、作りたいアプリケーションなどの設計書がありルールが決められていれば、AIの力を借りながら実装をしていくこともできるといえるでしょう。
プログラミングの自動生成が可能になり、簡単なアプリを作ったりできるようになることが、エンジニアやプログラマーの仕事がAIに奪われると言われている理由のひとつです。
開発ツールの進化
最近では、デザインツールが進化し、コーディングをせずとも綺麗な見た目のWebサイトが作成できるようになってきています。
また、コーディング不要でプログラムが開発できるノーコード開発ツールや、少ないコーディングで開発ができるローコード開発ツールも増えてきています。そのため、エンジニアのような専門知識がなくても、ある程度のWebサイトであれば作成が可能といえるでしょう。
このようなツールの発達によって、プログラミングができるエンジニアの必要性が低下していくことも、エンジニアの仕事がなくなる理由のひとつとして挙げられるでしょう。
正確性と業務効率化が可能
人間が作業をしていると、どうしても集中力の低下によるミスが生じてしまいます。
一方で、AIは同じ作業でも正確にこなし続けることができるため、ミスによる手戻りなどを考慮すると、ある程度のコーディングやデータ作成はAIに任せた方が効率的と考えられるようになるでしょう。
また、AIの方が人間よりも圧倒的に高速に作業を終わらせることが可能なことから、正確さと合わせて全体的な業務効率が実現できるのです。そのため、人間がしている一部作業をAIに任せようという企業も増えてくるでしょう。
AI時代でも人間にしかできないエンジニアの仕事
上流工程などパターン化できない業務
エンジニアといえど、ただプログラムを書いているだけが仕事ではありません。コーディングを行う前には、要件定義やシステムの設計などの工程があり、これらは決してパターン化されている単純作業とはいえません。
顧客と密に関わりながら、システムに対する要望を理解し、要望に沿ったプログラムを構築していくには、AIだけで完結するのは難しいでしょう。
このように、必ず人間のスキルが必要な業務があり、エンジニアの仕事全てがすぐになくなるというのは非現実的といえるでしょう。
運用・保守業務
エンジニアの仕事は、システムやプログラムが完成して終わりというわけではありません。
実際にシステムが動きだしてからの、運用保守業務まで含めて任されることが多いでしょう。そして、システムの管理やエラーの対処などは、あらゆるパターンがあり例外も多々発生するものです。
ある程度決まっている作業に対しては、AIの力を借りることもできるかもしれませんが、運用保守業務についてはまだまだ人間の柔軟性が必要といえるでしょう。
複雑なコミュニケーションや意思決定
エンジニアの仕事には、どの工程においても、密なコミュニケーションが求められることや重要な意思決定が必要な場面があります。
例として、顧客へのヒアリングや説明、社内での打ち合わせ、物事の方向性や仕様の決定等が挙げられます。
このような場面では、すべてをAIに担わせることは難しく、人間のほうが向いている業務といえるでしょう。
マネジメント業務
AIの苦手分野である意思決定や臨機応変な対応を代表するのが、マネジメント業務といえるでしょう。
現在のAIでは、決まった作業を正確にできたとしても、今起きていることを踏まえ適切な指示を出すことはできません。
システム開発や運用の現場では、取りまとめ役が求められるケースが多くあります。複数人で開発しているプロジェクトでは「リーダー」が必要であり、複数人を取りまとめるにはマネジメントスキルが求められます。これらは、人間にしかできない仕事でしょう。
まとめ
ここまでで、必ずしもAIに置き換わる仕事だけではなく、まだまだ人間のスキルが必要な場面が多くあることを解説してきました。
人間とAIには、それぞれ得意不得意があることがわかりましたよね。ここで大切なのは、AIに仕事を奪われるという意識ではなく、いかにAIを活用しつつ自分の業務や能力の幅を広げるかが、これからのAI時代では総じて求められるのではないでしょうか。
前述で例に挙げた通り、ChatGPTは一瞬でプログラミングをしてくれるため、これを活用することで業務効率化を図ることができます。但し、AIはそのコードが正しいかまでは判断ができず的外れな時もあります。その正誤を判断することができるのは、やはり人間であり、ChatGPTを「活用」しているエンジニアの仕事なのです。
AIに仕事を奪われると考えるのではなく、AIを活用して自分自身の市場価値を高めることを意識することが大切といえるでしょう。